メトロ文学館

2025年【第40回受賞作品】

電車内で、文化的な雰囲気と潤いを感じていただくため、「東京で感じるあなたの心」をテーマに詩を募集いたしました。ご応募いただいた作品の中から、優秀作品を電車内のポスターとして掲出(期間限定)するとともに、優秀作品及び入選作品※をご紹介いたします。
※入選作品は期間限定でのご紹介となります。予めご了承ください。

【審査員選考記】

審査員 詩人・エッセイスト 白石 公子 氏 しらいし こうこ

変わりゆく風景のなかで

 皆さまのおかげを持ちまして、「第40回メトロ文学館」が催される運びとなりました。東京内外から全392編の応募作品がありました。多くの心温まる、感動的な作品を寄せ下さりありがとうございました。またいつも作品を送って下さる常連の皆さまにも、この場を借りて御礼を申し上げます。「メトロ文学館」が、これほどまでに長きにわたりご愛好頂いているのは、常連の方々によるものが大きいと思っています。毎回、投稿の全作品に目を通していますが、常連の方々の作品からは、人生の変遷を感じるときもあります。入選の有無関係なしに、親しい人からの近況報告ように、毎回、作品を読むのを楽しみにしています。
 このところ選考中に気になる言葉、テーマがあります。「病院」「帰路」「孤独」などです。「病院」には「通院」「入院」「退院」「お見舞い」、そして「生と死」などの連想が生まれます。同時に自分の病院体験を思い出し、自分も話したい、語りたい、そして何事か綴ってみたい、という衝動が沸き上がってくるのです。特に「病院」からの「帰路」というのは、描く人の数だけ心のドラマと背景があることに改めて気づかされました。いや、なんの変哲もない、かわり映えのしない毎日の帰路でも、刻一刻と移ろいゆく季節、変化のなかにいます。孤独のなかに描くべきことがこんなにも豊かにあることを、みなさんの投稿作品は教えてくれるのです。どうぞ、ご自分の体験、感覚を大切に、言葉を紡いてみてください。メトロ文学館はいつでも投稿作品をお待ちしています。   

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【第40回優秀作品】

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「東京タワー」

鶴島 松良

「ある日、何故か行きたくなった東京タワー」をめぐる奇跡的な瞬間。人生への祝福、喜びと高揚感が体中に漲る瞬間が伝わってきます。

「会いたさがつのる」

原 稔宏

確かに東京ならではの募る「会いたさ」があるのかもしれません。一人電車に揺られながら会いたい人の顔を無意識に探しています。

「遠距離恋愛」

宮城 いづみ

「不慣れな電車を乗り継いで/あなたに会いに行った」遠距離恋愛模様。都会の速さにたったひとり取り残されていく感じが切ない。

「記念館にて 筆の雨」

新村 衣里子

「文士の文」の目の前にしたときの「ざわめき」の意味が綴られ、心を許した手紙の文字が金糸の雨になって降り注ぐ様が美しい。

「絵を観る子を見る」

吉村 史年

五歳の息子の初めての美術館体験。子どもを挟んで「絵を観る子を見る」三人の姿とそれぞれの心の揺れがしみじみと感じられます

「草のトンネル」

柳田 ひさ

山手線付近にもこんな「草のトンネル」になる自然が残っていることに驚きました。幻想的な風景、再生の手ごたえが心地よい。