4種類のサクソフォン、それぞれの役割
一般的に使われているサクソフォンは4種類。ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスで、それぞれパート別の役割があります。
クラシック、ジャズ、ポップスと幅広い音楽シーンで活躍するサックス。1840年代にベルギーのアドルフ・サックスによって発明された楽器で、正式名称はサクソフォン。今回、メトロコンサートオンライン配信で演奏していただいたサクソフォン五重奏のグループ『Five by Five』のメンバー5人に、サクソフォンの魅力や演奏法などについて伺いました。
一般的に使われているサクソフォンは4種類。ソプラノサックス、アルトサックス、テナーサックス、バリトンサックスで、それぞれパート別の役割があります。
宮越悠貴(以下、宮越) 「メンバーの中で一番高い音を出せるサックスがメロディーを演奏することが多く、ソプラノサックスはメロディーを吹きつつ、時々ハーモニーも吹きます」
スティーブ・チェイ(以下、スティーブ) 「アルトサックスはソプラノサックスと一緒に吹いてハモったり、たまにメロディーを吹くこともあります」
KENTA 「テナーサックスはハーモニーを吹くこともあれば、ジャズやポピュラーミュージックではメロディーを引き立てるリズムを吹いたり、ソプラノサックスと一緒にメロディーでハモったりと臨機応変です」
蒙和雅(以下、蒙) 「アルトサックスとテナーサックスは他のパートとの間を埋めるなど、いろいろなパートと連携して音楽を充実したものにするイメージです」
田中奏一朗(以下、田中) 「ベースラインを吹くバリトンサックスは、リズムを生み出します。五重奏でジャズやポピュラーミュージックを演奏する時はドラムの役割もします」
美しい音色、かっこいいリズムなど様々な表情が出せるサクソフォン。一番の魅力はどんなところにあるのでしょうか。
宮越 「かっこいいに尽きます。変幻自在さ、柔軟さ、幅広さはどの楽器にも負けません」
スティーブ 「他の楽器にはない多様さです。クラシック、ジャズ、ポップスはもちろん、演歌もできます」
田中 「アンサンブルは大きな魅力です。同属楽器では弦楽四重奏がポピュラーですが、同じ形態のサクソフォン四重奏も人気があります」
KENTA 「人の声に似ていると表現されることがよくありますが、まさに喜怒哀楽といった人間の感情を表現できますし、吹く人の個性が出ます」
蒙 「楽器としてのポテンシャルが高いです。メジャーな楽器の中では新しく、誕生から200年ほどしか経っていません。少し未熟な部分があるのも魅力だと思います」
サクソフォンといえば、四重奏の“サックスカルテット”がポピュラーですが、『Five by Five』のように、五重奏には五重奏ならではの強み、特徴があります。
宮越 「1本増えることでハーモニーが広がります。ジャズやポップスには絶対に必要なもう一音で、5人だからこそ、ジャジーなハーモニーが出せますし、役割を際立たせることができます」
田中 「五重奏だとやはりハーモニーの迫力が違ってきます」
スティーブ 「サックス奏者は基本的に全てのパートを吹くことができます。5人で演奏していて、例えば、低い音が足りなくなったら足せばいいですし、自由がきく点もメリットです」
「紅蓮華 -サクソフォン五重奏- 」
作曲:草野 華余子 編曲:宮越 悠貴 演奏:Five by Five
「丸の内サディスティック -サクソフォン五重奏- 」(STEREO&BINAURAL)
作曲:椎名 林檎 編曲:宮越 悠貴 演奏:Five by Five
サクソフォンは素材の質感などから一見、金管楽器にも見えますが、木管楽器です。
KENTA 「素材には真鍮に、ラッカーや金メッキをかけているものなどがあります。管体が薄くなると響きが変わるため、研磨剤ではなく、専用のクロスで磨きます」
口の部分についているリードというケーン(葦)でできた板状のものと、マウスピースがセットになっており、息を吹き込むとリードが振動し、菅の中に入って増幅され、音が鳴る仕組みです。
宮越 「金管楽器は唇を震わせて音を出しますが、サックスはシングルリードに属しています。金管楽器の音量の大きさと、指が早く動かせる木管楽器を掛け合わせた楽器で、ハイブリットなんです」
田中 「基本的にリコーダーと同じでドレミファソラシドがあり、音を出すのは簡単ですので初心者の方でも扱いやすいと思います」
美しい音色が印象的なサクソフォン。良い音色を出すために大切なこととはどんなことでしょうか?
KENTA 「あらゆるジャンルの曲を聴く。美味しい食事を食べる、絵を見る、景色を見る。価値のあるものに触れ、感性を磨くことが大切だと思います」
蒙 「楽しく吹くことです。新しく始める人は楽しく吹いているうちに良い音を出せるようになると思います」
田中 「例えば、人に教えるときは、良い声で歌うつもりで吹くようにと伝えます。吹く時に力が入ると体や頭の中で響かせる空間が狭くなるので。歌う感覚と同じようにすると音色が変わります」
スティーブ 「良質なものを手に入れれば、絶対にいい音が出ます」
宮越 「自分が気に入ったものを使うのが一番だと思います」
クラシック、ジャズ、ポップス、さまざまな音楽に対応するサクソフォンですが、それぞれ演奏法には違いがあります。
宮越 「クラシックは美しい音色やハーモニーが特徴で、ジャズやポップな楽曲になると、そこにリズムが出てきます。Jポップを演奏する時の難しさは歌詞です。歌詞をどこまで音符として忠実に守るのか、アーティストの歌い方のくせをどこまで真似するのかなど、試行錯誤して演奏することが重要だと思います」
また、サクソフォンにはテクニックを駆使したさまざまな演奏法があります。
KENTA 「例えば、リードを舌で弾くスラップタンギング。また通常、管楽器は一つしか音が出ませんが、いつもと違う指使いをすることで、二つの音を滑らかに繋ぐポルタメントという奏法もあります。さらにビートボックスや、除夜の鐘を真似した奏法などいろいろなテクニックがあります」
「アメイジング・グレイス -サクソフォン五重奏-」(BINAURAL)
編曲 : 松永ちづる (Trans. : 宮越悠貴) 演奏:Five by Five
「この道 -サクソフォン五重奏-」(BINAURAL)
作曲:山田耕筰 編曲:多胡 淳 (Trans. : 宮越悠貴) 演奏:Five by Five
「アメイジング・グレイス -サクソフォン五重奏-」
編曲 : 松永ちづる (Trans. : 宮越悠貴) 演奏:Five by Five
「この道 -サクソフォン五重奏-」
作曲:山田耕筰 編曲:多胡 淳 (Trans. : 宮越悠貴) 演奏:Five by Five
新型コロナウイルスの拡大は音楽界にも大きな影響を及ぼしました。
田中 「以前は月に何度かコンサートホールやイベントで演奏していましたが、コロナ禍で中止や延期になりました。自粛期間中は楽器からあえて離れる人もいましたし、動画作成やオンラインコンサートをやる人もいましたね」
スティーブ 「今ではライブ配信でチケットを売るというシステムも増えていますし、オンラインでのライブ配信は今後どんどん増えていくのではないかと思います」
サクソフォンは日々の練習も欠かせません。コロナ禍で練習環境はどれだけ変わったのでしょうか。
田中 「自宅が防音になっていたり、個人の練習はそんなに変わらないかと思います。ただ、本番もないのに練習し続けるというのは厳しいものがありました」
宮越 「本物はなくならないことを認識できた期間でもありました。自分のフィールド以外の目先のものに手をつけたりせずに、しっかり蓄えてきた人が活動の場を広げられるのではないかと。動画を見て練習できるようにオンラインで配信するなど新しいサービスも始められるようになりました」
KENTA 「ソロのコンサートでピアニストと共演するときに気をつけるべき点などのレクチャー動画をあげたりもしました。一人で練習したい人たちを手助けする動画がYouTubeで配信されていましたし、動画での発信が盛んになった印象です」
音楽事情は日々変化しています。サクソフォンのこれからの可能性、展望についてどんなふうに考えていますか。
KENTA 「クラシック、ジャズ、ポップスなどはジャンルというより、音楽スタイルの違いと考えています。クラシックの中のサクソフォンというとイメージが決まってくるように思いますが、もっとイメージの幅を広げられたらいいなと思います」
蒙 「サックスはポップスのイメージも強いと思いますが、いろいろなジャンルで活躍するからこそ、どのジャンルでもサクソフォンの役割を深めることができたらと思います」
田中 「演奏者がいて、聴く人がいて、音楽を共有することで演奏会は成り立つと思いますが、今回のように動画を通してでも、音楽の持つパワーを伝えられると思います」
スティーブ 「特にクラシックは世界でスタイルが違います。日本のスタイルをアジアや世界に広めて、どんどん知ってもらえたらと思います」
宮越 「頑張って楽しいことを見つけ出さないといけない世の中になってしまったので、楽しむことをいつまでも忘れずに、サクソフォンを続けていくことが理想です」
「Up High Above the Beautiful Rainbow -サクソフォン五重奏-」
作曲:MALTA 編曲:Miho Hazama 演奏:Five by Five
「GRADUATE -サクソフォン五重奏-」
作曲:MALTA 編曲:Rika Ishige 演奏:Five by Five
「GRADUATE -サクソフォン五重奏-」(BINAURAL)
作曲:MALTA 編曲:Rika Ishige 演奏:Five by Five
人間の頭部を模したダミーヘッド等を用いて、人間の鼓膜に近い環境で録音することにより、ヘッドフォンやイヤフォンで聴くと、その場に居合わせたかのような臨場感の高い音を再現することができる収録方法です。ぜひヘッドフォンやイヤフォンでお楽しみください。 (※動画タイトルに(BINAURAL)とあるものが対象です。)
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