メトロ写真教室

第53回メトロ写真教室 浜離宮恩賜庭園

2023年10月29日 (日) に第53回メトロ写真教室を開催いたしました。
午前中はプロの写真家による講義を行い午後は撮影地の浜離宮恩賜庭園にて撮影会を行いました。
ご参加いただきました皆様が撮影された作品に写真家 中谷氏の講評を添えて掲載いたします。

総評 写真家 中谷 吉隆氏

第53回メトロ写真教室は、参加人数を小人数に絞り、安全・安心に十分な注意を払い行われました。
午前中は、教室で事前に参加者から提出された作品の個評を行い、続いて今回の撮影場所をロケハンした写真をもとに紹介した後、写真の基礎的な要素、撮影の技術的なことなどを私の作品を投影しながら講義を行いました。
当日の朝方は雨に見舞われていたのですが、撮影地の浜離宮恩賜庭園に向かう午後にはすっかりと秋晴れとなっていました。浜離宮は、江戸時代には、江戸城の「出城」としての機能を果たしていた徳川将軍家の庭園です。
お花畑には、季節の花としてのコスモスが咲き誇っていて、背景にある汐留エリアの超高層ビルとのコントラストが鮮やかでした。東京湾に面し、海水が出入りする「潮入りの池」の中央には、歴代の将軍が使用した「中島の御茶屋」が再現され趣を出しています。その他にも3つの御茶屋があり当時を忍ばせます。また富士見山という小高い丘からの光景は、今は富士山に変わって超高層ビルと中島の御茶屋の対比があり見事です。庭園内には「三百年の松」をはじめ随所に手入れされた松があり、当時の優雅さを思わせます。
そういった歴史にふれながら、皆さんとカメラを向け、途中では撮影に関するさまざまな質問に答え散策しました。
撮影後には、ご希望の方のカメラのモニターで画像を見ながら個評をして、無事写真教室を終えました。
参加者からの提出作品はバラエティーに富み、タイトルに作者の思いが込められていて素晴らしいものでした。その中から一人一点を選び、講評を付けて発表します。

審査員の詳細はこちら
「浜離宮~秋のにぎわい」

飯村 道子

審査員の個評

潮入りの池にある日本家屋の「中島の御茶屋」と右奥に林立する高層ビル群との構図は堂々としています。これこそ浜離宮ならではの光景で、しかも茶屋には和服姿の人もいて、賑わう秋に色を添えていて情感が伝わります。オーソドックスな、とてもしっかりとした作品です。

「鳴らない踏切」

市村 隆明

審査員の個評

超高層ビルが立ち並ぶここ汐留地区は、その昔、鉄道の貨物ヤードなどがあり、引き込み線が数多くありました。その時代の名残でしょうか、いや現代の遺産ともいうべき装置に目を止め、背景のビル群と対比させていて見事です。観察力があっての作品となりました。

「木の下で」

伊藤 雅隼

審査員の個評

浜離宮には、松をはじめ多くの種類の樹木が手入れもよく植えられています。その一本の木の下に潜り込み上空を見上げての発見です。緑豊かな葉たちが少しずつ色を変えていて、季節の変化を感じさせ、色のパターン的な中に多数の房も見られ、面白い空間を一枚にまとめました。

「写りこむ景色」

氏家 博之

審査員の個評

庭園の中の、これは「燕の御茶屋」でしょう、瀟洒(しょうしゃ)な佇まいを見せています。その家屋の大きなガラス戸に、取り囲む周辺のビル群などが写り込んでいて、背景ともどもと置かれた環境を伝えてくれます。写り込みがより鮮明になる時間帯だと素晴らしい作品となったでしょう。

「秋のご褒美」

大木 恵

審査員の個評

イヤー楽しくなります。庭園を散策し様々な情景にふれてシャッターを切ったでしょう。一休みに売店で見つけた串だんごにゆるむ頬と同時に写真魂が現れての一枚だと思います。ほおばるまえのショットは、秋の情感もあり、この発想にはご褒美の拍手を贈りたくなります。

「雅楽の調べ」

小熊 文子

審査員の個評

この日庭園では、「将軍のお庭で舟遊び」としてのお月見の会が開かれていました。池には和船が浮かび、夜には船上で雅楽が演奏され、雅な世界へといざなってくれました。烏帽子装束が奏でるその情景を捉えていて、遅くまで頑張ってと一コマからは音が聞こえてくるようです。

「龍松」

金森 一仁

審査員の個評

庭園に入ると、堂々とした「三百年の松」に圧倒されます。徳川将軍家が植えた松は随所にあり、この松もその一本でしょうが、タイトルが示すように龍を思わせます。身をくねらせて天に昇っていくかのアングルが効き、ときどき赤い舌を出しているのではと創造させます。

「はぐれたかも?」

佐々木 凌

審査員の個評

池のふちを一羽の鴨が歩いています。この状態を「はぐれた」と感じ、「鴨」と「かも」を掛け合わせたタイトルに、ユーモア、ウイット感があり笑いました。しかし、よく見ると鴨クンの首が少し傾いて、悩んでいる表情にも見え、言われてみれば「そうかもネ」と納得しました。

「見事に釣られました」

清水 涼太

審査員の個評

空からの大きな釣り針状のものに、小さな玉が連なりとても不思議な植物です。眺めている内につい釣られてシャッターを切ったようです。この光景に釣られたのは作者ですが、画面左上の葉が作者の分身で、数分後にこの針にかかったという、飛躍のある面白い作品になりました。

「水辺のご挨拶」

下谷 真由子

審査員の個評

潮入りの池には、東京湾からの海水に混じり魚が入ってきて、白鷺が小魚を狙います。その鷺クン、棒の上の筒状の物をマイクに見立て、園内の来場者に「これから小魚を獲る演技をご覧にいれます」と一言ご挨拶。事実、見事に小魚を獲て、拍手喝采でした。楽しさのある作品です。

「秋の仮装」

鈴木 有加

審査員の個評

枯れ枝に鳩一羽という光景ですが、このモノクローム調の画面が、何かを暗示しているようで、見る者を異次元の世界に連れていくようです。それはタイトルに惹かれるからかも知れず、今から何かが始まるのではという、思いに駆られるからかも知れません。鳩は作者の擬人化かも。

「出たー!ゴースト」

関口 ソノエ

審査員の個評

水面に写りこんだビルの影が、水面のゆらぎでいろいろと表情を変化させて、アブストラクトの絵を見ているようです。それを狙っていての一枚、眼や口を思わせる一瞬に出会いました。しかもその表情は恐ろしくもあり、昼間なのに背筋に冷たいものが走ります。怖いですネー

「透かしコスモス」

西村 寛造

審査員の個評

花畑には新しく花を咲かせたコスモスが咲き誇っていました。その中の一花を捉えて空中に浮かばせ、しかも裏側から逆光線を使い透かして、八枚の花びらの有様をキャッチしています。花弁の濃淡や花の脈筋の様子がわかり、感心しました。左側の黒い影が気になるところです。

「石に願いを」

野辺 こうじ

審査員の個評

はて何だろう?と思うショットですが、庭園にある小さな神社の鳥居の貫(ぬき)に、善男善女が願いを込めて投げ、運よく留まっている石です。全体の状況を見せず、この切り撮り方はインスタレーション作品を見る思いです。背景に黄葉を配したのも季節感を感じさせ見事です。

「ビルの隙間の花畑」

原 唯菜

審査員の個評

庭園にあるお花畑には、後景にそそり立つ高層ビル群が迫っています。キバナコスモスとビル群との対比が良く、都会のどこにこんな光景があるのだろうと、関心を呼びます。花の有機的な色合いと無機質的なビルとの組み合わせが決まった一枚です。春には菜の花で彩られます。

「龍の眼界に映るものとは 浜離宮」

米杉 玲子

審査員の個評

自然現象とは摩訶不思議というか奇想天外なことを生じさせます。この龍に見えるのもその一つです。しかし、これはこの角度から見てのことで、それを発見した作者の眼力いや感覚に感服です。そして、タイトルがまたこの写真を増幅させ、内容豊かなものに昇華させています。

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